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二階堂和美 97年よりシンガーソングライターとして活動をはじめる。優しくも力強い歌声と幅広い音楽性、絶妙なセンスと筋のある音楽スタンス、そして、明るく人懐っこい性格が日本全国、世界各国から愛されている。2011年発表のオリジナルアルバム「にじみ」は二階堂のこれまでの活動の集大成とも言える作品であり、このアルバムが映画「かぐや姫の物語」起用のきっかけとなった。近年はNHK「おかあさんといっしょ」への楽曲提供や、小泉今日子さんのアルバムへの楽曲提供、地元の学園歌を手がける等、活動の幅を更に広げている。
広島県在住。浄土真宗の僧侶でもある。

悲しみや不安が希望に向かうような、
ほんの少しでもそんな作用があったらいいなと願って書きました。

高畑勲監督がその歌声に惚れ込み、スタジオジブリ最新作「かぐや姫の物語」の主題歌を手がけるに至った二階堂さんは、シンガーと僧侶という二つの顔を持つ異色のアーティスト。4月には初のお子さんも生まれ、新たに「母親」という顔も持った二階堂さん。その力強くも透明感あふれる歌声と、自身の世界観がにじみでている楽曲、一度聴けば誰もがひきつけられる魅力の源とは? 今回、様々なお話を伺う中で、その答えが見えてきました。

まずは、高畑勲監督作品「かぐや姫の物語」の主題歌制作を依頼されたときの気持ちをお聞かせください。

「いよいよ来たかー」と思いました。そもそもよく私の事をご存知だったなというのが驚きで。わたしの『にじみ』という2011年に出したアルバムをきいてくださってのことだったらしいんですけど、お会いしてお話ししたら、私の作った曲をほんとに聞き込んでくださっていて、すごく共有できる感覚がたくさんあって、おこがましいですけど「任せてください!」って思いました。

映画「かぐや姫の物語」は完成まで7年をかけたという高畑監督渾身の作品ですが、脚本を読まれてどういう印象を持ちましたか?

脚本を読ませていただく前に、原典の「竹取物語」を読んでみたんですけど、その時点で「こんな話だったっけ?」と思いました。月に帰るということが、お浄土に往くことに重なりました。監督の描かれたこの映画もそれを強く打ち出しているように思えました。また、映画のかぐや姫はものすごく激しく感情を表すんです。その揺れ加減が自分にも重なるし、それが人間の生の姿だなと。姫に限らず、出てくる人たちみな、仏教で聴かせてもらう「煩悩だらけのわたしたち」の姿そのままだと思いました。

「かぐや姫の物語」の主題歌「いのちの記憶」を作詞作曲する際、一番こだわったことは何ですか?

様々な立場の人に当てはまる歌でありたいということです。物語の中で言えば、旅立ってゆく姫であり、残される翁媼であり、またこの世で出会う様々ないのちであり。また現実の私たちの世界でも、悲しみを抱えた方、これからの老いや死への不安を感じている方、またそんな方々をお世話している方、あるいは新しく生まれるいのちに触れるよろこびを感じている方、どんな方にとっても、今生きていることがかけがえのないことだっていうことを味わえるような歌にしたいと思いました。悲しみや不安が希望に向かうような、ほんの少しでもそんな作用があったらいいなと願って書きました。

11月20日リリース「ジブリと私とかぐや姫」の制作中の出来事やエピソードを教えてください。

「いのちの記憶」はお腹の中に新しいいのちを宿した状態で作ったんです。録音をしたのも生まれるひと月半前でした。生まれてからは毎日があれよあれよと過ぎていってしまって、「うわーどうするんだろう…」みたいなまんま、ものすごいラストスパートでみんなが協力してくれて、なんとか完成しました。この年になって、しかも乳飲み子を抱えた身で、こんなに徹夜するなんて思っていませんでした(笑)。なんだかんだで、内容そのものはやりたいようにやらせてもらえて、すごく満足の一枚ができました。

これからもっと注目度が高まってきますが、ご自身の中で何か変化を感じることはありますか?

変化は特にないですけど、ぼんやり描いていた目標というか、こうであったらいいのにな、みたいなことが、ひとつずつ実現していくのを感じます。例えばオーケストラで「めざめの歌」をやりたいなと思っていたのができた!とか。私自身は有名になりたい気持ちはないのですが、認められることで、やりたいことがやれるようになるのは、とてもありがたいことだなと思います。

二階堂さんはアーティストにして現役の僧侶という異色の肩書きをお持ちですが、まずはアーティストを志したきっかけや影響を受けた方などをお聞かせください。

物心ついたころから、アイドルの真似やCMソング、アニメの主題歌のコピーをしてました。高校生の頃コピーバンドのボーカルを頼まれ、そこからなんとなくそっちの道を意識し始めたような。親は「やくざな世界」と決めつけていて、そうでない音楽の世界があるんだよと説明しても理解してもらえなかったし、私自身ほんとにそんな世界があるのか正直なところわからなかったし、経験を重ねながら確認作業して、決意表明などしないまま、なんとなく今日までやってきた感じです。

続きニューアルバム『ジブリと私とかぐや姫』映画「かぐや姫の物語」の歌集アルバム的な位置づけで制作された二階堂和美のニューアルバム。主題歌「いのちの記憶」など映画「かぐや姫の物語」のオリジナル・イメージソングのほかに、二階堂自身のオリジナル楽曲、高畑監督作品にまつわるカバー曲も収録。 ■発売日/好評発売中
■2,500円
■ヤマハミュージックコミュニケーションズ

目標としたり憧れていたりするアーティストさんは誰ですか?その理由もあわせてお聞かせください。

20代のころ、洋楽ばかり聴いてた中で、笠置シヅ子さんを知ったのは大きかったですね。ものすごく歌が上手いという訳じゃないんですけど、勢いがすごいんですよ。お化粧していないときは、トイレ掃除のおばはんと間違われてたらしくて、そのオーラのなさもかっこいいなーって思いました。ここぞ!ってところでエネルギーを爆発させる瞬発力。わたしにとっては、普段からアーティスト然としている人より、そんな姿のほうがしっくりきました。

では、僧侶になろうと決意したきっかけは?

21歳の時、小さい頃から育ててくれた祖父が亡くなったんです。その際「亡くなった方は既に仏となって私たちを見守ってくださる」って聴かされて仏教は残された人のためにあるんだって気づいて、それなら若い私たちにも大いに関係あるな、って。その後、もちろん「早まったかな!?」と思ったりしたこともありますが、年を重ねて、思い通りにならない事を重ねる度に、だんだん仏教に素直に向き合えるようになりました。

アーティストとしてのご自身と僧侶としてのご自身。どういうふうにしてバランスをとられていますか?

何年かかかってようやくバランスがとれてきた気がします。どちらも人前で喋ったり歌ったりするし、似ているんですよ。心を耕す仕事ということではまったく同じです。仏法を聞いて歌詞を思いつく事もあるし、エゴがでて仏法が沁みる。どちらもが相互作用して今の自分があるなと思えます。困る事は、今後本格的にお寺を継いだら、ツアーに行けないってことですね。お葬式って突然入りますから。人は産まれる日と死ぬ日は選べないんですよね。

二階堂さんにとって「いのち」とは何ですか?

限りあるものです。だからこそ輝かすべきものでもある。でも、たとえこの世でのいのちが終わっても、人のこころの中では永遠に生き続けるものでもあると思うんです。だからいのちがおわったらそれで全て終わりじゃない。記憶というのはそういうものかなと思ってこの曲を書きました。

4月にご出産され、一児の母となった二階堂さんですが、ご出産前と比べて一番変わったことは何ですか?

孤独じゃないって事ですかね。一人の時間がなくなったとも言えますが、赤ちゃんと常に一緒に居るので、気持ちが明るくなりますね。でもあんまり泣かなくなったんですよ!たくましくなったのはいいかもしれないけど、タフすぎて感動しなくなったんだとしたら、致命的かも(笑)!

今後はどんな活動を続けていきたいとお考えですか?

あまり気負いはありません。縁のある仕事をやらせてもらうだけです。せっかくだから子どもと一緒に楽しめる音楽をなにかやってみたいですね。あとは、仏教を依りどころとして生きる姿が、そのまま人にも伝わるような、そんな生き方がしてみたいです。)!

2013年は二階堂さんにとってどういう一年でしたか?

いろいろ大切なものが生まれた年でした。こんなにたくさん「おめでとう」を言ってもらったことはないなというくらい。「そうかー、わたしはおめでたいんだ!」って、まわりから祝福されることでそれを味わわせてもらいました。でもここからが始まりなんだなって責任を改めて感じてます。死ねなくなりました(笑)。

では最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。

仏教用語で、和顔施(わげんせ)というのがあります。財がなくともできるお布施の一種で、笑顔を施す、 つまり和やかな顔で人に接するのもお布施のひとつなんです。お布施しまくりましょう。にんにん!

 

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