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堺 雅人(さかい まさと)1973年、宮崎県出身。早稲田大学入学と同時に演劇研究会に所属し、92年には「東京オレンジ」を旗揚げ。劇団の看板俳優として注目を集め、以来、舞台はもちろんTV、映画で活躍。11年には第36回報知映画賞で主演男優賞を受賞。近年の出演作「南極大陸」(11/TBS)、「リーガル・ハイ」(12/CX)。『ゴールデンスランバー』(10)、『武士の家計簿』(10)、『ツレがうつになりまして。』(11)。その他待機作に『その夜の侍』(12)。

前作を超えるスケールで描いた男女逆転の世界は魅力的です。ようやく半分、あとはドラマですが、大きなグランドをもう一周しないといけない気分ですね。

2010年に大ヒットした男女逆転の『大奥』から2年。2012年秋~連続テレビドラマ『大奥~誕生~[有功・家光篇]』、そして12月22日は劇場版第二弾として、さらにスケールアップした『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』が公開。今回、連続ドラマの主人公・有功と映画の主人公・右衛門佐の両方を演じる堺雅人さんにお話を伺いました。

―映画撮影を終えられて、今のお気持ちを教えてください。

率直な気持ちは、ほっとしたというのが半分、まだ終わった気がしないというのが半分ですね。右衛門佐・綱吉篇が終わっただけで、これからもうひとつ大きいの(TBSドラマ「大奥~誕生~[有功・家光編])が待っているので。クランクアップ1日前の、綱吉との運命的な重いシーンが終わって少しほっとしています。ただ、今は右衛門佐・綱吉篇というひとつの輪を一周したところで、もうひとつ有功・家光篇という大きな輪を一周しないと終わった気がしないですね。はれやかな気分ではもちろんあるのですが、今の時点では嬉しさもまだ中くらいで実感はないです。右衛門佐・綱吉篇が良かったとしても、有功・家光篇がこれでボロボロだったらどうしようもないですからね。それまでは気を引き締めて、もう一周大きなトラックを回らなければならないと感じています。

―右衛門佐を演じてみて、綱吉(菅野美穂)は右衛門佐にとってどういう存在と思われましたか。

菅野美穂さんが演じられた綱吉はすごく大きな存在で彼女が一本の木だとすると、右衛門佐はそこにまとわりつく“つる”のような存在です。ちょうど右衛門佐の部屋には藤棚があって、のうぜんかつらと藤が植えられています。右衛門佐はまさに大樹の周りを彩る“つる”の植物。今回は本当に菅野さんしかみていませんでした。菅野さんの一挙手一投足がすごく良く、実際にお会いして本当に素敵な方でした。

―右衛門佐を演じられるにあたって、前もって準備されたことなどはあったんでしょうか。

右衛門佐は、水無瀬という今も残っている公家の出身です。ちょうど京都と大阪の県境に水無瀬神宮というお社があり、そこの御当主が水無瀬の31代の方なんです。水無瀬という家を調べていくと面白く、承久の乱で幕府によって流罪になった後鳥羽上皇を祭っている家なんです。代々幕府に敗れた天皇を祭っている家の人が幕府に入るっていう運命のいたずらみたいなものがとても興味深いと思いました。幕府に対して敵意を持ちつつも、幕府側に入りそのなかの人を愛してしまう悲しさ。また、実際に水無瀬の地に行って気づいたことですが、水無瀬川という川があり、その名のとおり空川なんですが、伏流水は昔から名水で有名らしいです。この川の、表向きと心の中がまた違うものが流れているという点が、右衛門佐の“忍ぶ恋”といったイメージと重なると思いました。たくさんお休みをいただいたおかげで各地の観光名所を巡ることができ、これは思わぬ役得でした(笑)。

―京都がお好きと伺ったことがあります。

時間があれば奈良まで足を延ばしたいと思っていたのですが、京都は休みがいくらあっても足りないほど魅力的な街でとてもその時間はありませんでした。また撮影期間があった1月2月は観光的にはオフシーズンだったため、ゆっくり見てまわれて夢のような2か月間でした。

―菅野さんと共演してどのような印象を持ちましたか。

よくわからない方ですね(笑)。ただ、目が離せない方で、菅野さんが演じられた綱吉は父親の有り余りすぎる愛の中で育ちました。そんな綱吉が持っている香りのきつい花のような、色香のようなものが、菅野さんの演技からすごく感じられました。

―他に共演された方で印象に残っている方はいらっしゃいますか。

西田敏行さんとは初めて共演させていただきました。西田さんのお芝居を間近でみられて本当に感動しました。対面シーンでは恐れ多くてあまりちゃんと顔を見られなかったぐらいです。続き

西田さんが演じられる桂昌院は本当に父性と母性が一体化したような役なんです。お父さんでもありお母さんでもあり、おじいちゃんとおばあちゃんも全部一緒になっているような役で。もし、ぼくが桂昌院をやるとしたら途方に暮れてしまうかもしれない。西田さんのお芝居を観ていると、時に母の顔になり時に父の顔になり、時に幼児の顔になるんです。ああ、こんな桂昌院の毒気のような愛情をずっと受けて育ってきたから、こんなきれいな綱吉が生まれたんだなとすごく納得しました。大奥で、徳川家を繋げていかなければいけない人たちが持つ、ある意味「毒」のような部分をこの映画はきちんと描いていると思います。よしながさんの原作にもある、“ただれた愛”というのでしょうか。菅野さん演じる綱吉という存在には、香りが甘すぎて頭がくらくらしてしまうような愛がすごく体現されていると思います。西田さんの演技は、その毒の部分いわゆるアブノーマルな部分も含めて圧巻でした。あと尾野真千子さんが『クライマーズ・ハイ』以来の共演だったのですが、ちょっと偉そうな言い方ですが本当に素敵な女優さんになられたなと思いました。『クライマーズ・ハイ』の時には、監督に怒られてしゅんとしていたんですよ(笑)。柳沢吉保(尾野真千子)の登場するシーンは緊迫感がありとても好きです。現場で尾野さんが金子監督に提案されたアイデアはとても素晴らしいものがあり、彼女とのお芝居も楽しいなと感じました。

―金子監督とお仕事をしてみてどうでしたか。

金子監督は丁寧なわかりやすい説明をされる方です。監督ご自身もものすごく悩んでいらっしゃった時もあるのですが、それを率直に仰って全員で考えようという空気を作ってくださいました。一方的な通達ではなく、こう思ってここが引っかかっているんだけどどうだろう、という感じで、現場でのアイデアをものすごく大事してくれました。分からないことを分からないと言い切って全員で考える時間を作れるだけの度量があり、目的地をみんなで探しながら作っていく、リーダーとしてはすごく頼れる存在ですね。

―今回の撮影で何か印象に残っていることはありますか。

時代劇を京都で撮影できたことが僕にとって大きいですね。こだわりがすごい京都のスタッフと一緒に仕事ができるのは毎回楽しみで、技術を守り続けている人たちのもつ温かさと心意気は普段とはまた違う魅力がありました。それは只々そこにいるだけで楽しかったりするし、働きぶりを傍で見ているだけでも身の引き締まる思いがしました。

―撮影中、苦労したところはありますか。

あまり思い当りませんね。1月2月の京都での撮影だったので寒かったですけど・・・。でも右衛門佐の秘めた思いや厳しい人柄を考えると、冬で良かったかもしれません。有功と右衛門佐が太陽と月だとしたら、月の部分を冬に撮って、太陽の部分を夏に撮るのは良いことのような気がします。これも京都の夏を知らない僕だから言える呑気な発言かもしれませんが(笑)。

―ぜひ観客の皆さんにここだけは観てほしいというシーンはありますか。

登場人物一人一人の存在感がとても大きいと思うので、見どころだらけだと思います。なにより、“男女逆転”した、もう一つの江戸時代に是非足を運んでいただきたいですね。男女が逆転するという一つのアイデアだけで、こうまで江戸時代が活き活きとそして現代社会にも通じる色んな示唆に富んだ物語になるのかと思います。原作を読まれた方は絶対一度は唸っているはずですし、原作を知らない方もあるいは前作の映画をご覧になっていない方でも楽しめる作品だと思います。この不思議な世界をぜひ体感していただけたらと思います。

映画『大奥 ~永遠~ [右衛門佐・綱吉篇]』●12月22日(土)公開 時は元禄、五代将軍綱吉の時代。一人娘を亡くし世継ぎ誕生を求められるも一向に懐妊しない綱吉は、孤独と不安に苛まれていく。運命に翻弄され、生きる気力をも失った綱吉に手を差し伸べたのは、人知れず綱吉を見守り続けていた右衛門佐だった―。男女逆転「大奥」続篇プロジェクト最終章!かつてない豪華演技派キャスト集結! 監督:金子文紀 出演:堺雅人、菅野美穂、尾野真千子、西田敏行 他 配給:松竹 アスミック・エース

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